金融の初心者に勧めたい
本書の最大の眼目は、米国のサブプライム問題を教訓に、いかに日本において優良な住宅金融を構築していくか(ちなみに著者は建設省出身者と住宅金融支援機構職員)だが、問題発生の原因ばかりでなく、過剰流動性の原油、穀物市場への逃避による影響や金融機関の問題など、世界全体の実体経済への影響もそれなりにしっかりと描かれている。なにより評価できるのは、「モーゲージ」や「劣後」「レバレッジ」など金融以外ではあまりお目にかからない商品や用語を、時には図を添えて、私のような金融商品に疎い人間にも分かるように解説し、「ABCP」などの略語表も用意してくれていること。その意味で、金融について簡単に学びたい初心者が、現実の動きに即しながら読むのに適した内容となっている。
ただ、金融工学に基づく証券化の危険性について、リスク管理と情報の非対称性の問題であり、融資時の適切な審査と情報公開基準の確立により解決可能だと考えているようだが、一方で「金融工学にもとづくリスク管理は、基本的に各主体の相互作用がないという前提で(中略)、状況によっては、皆が一斉に売りに走り、予想を超えて価格が暴落し、市場の不安定性が増加する可能性がある」、との指摘も。情報の非対称性の問題に加え、このような問題点も行動経済学の成果を取り入れて考慮した場合、ここで著者のいっている「補完的なリスク管理」だけで解決可能なのかは、検討の余地があるように思う。
引用元:
金融の初心者に勧めたい城生綾菜
サブプライム問題の背景から問題が深刻化した理由やプロセスを明確に示しているが、やや総花的なイメージが否めない内容である。筆者が複数の共著であることも影響しているのかもしれないが、問題の背景の説明や周辺部分に多くの時間を割いており、本質的な部分の説明が中途半端になっている。中途半端の意味は、直接金融の素人には、わかり難く、プロには、簡単すぎる内容という意味である。あまり直接金融に詳しくない人は、「サブプライム問題とは何か」春山昇華 宝島社新書を読んだ後に、詳細や周辺の知識を補足するのに読むと良いかもしれない。
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