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ちょっと違うような気もするけど、「十周年」を迎えて飛び交う言葉をいろいろ聞きながら、あらためて一度、考えてみました。この本は、おそらく、それについて「研究」したものの中では、最高傑作ではないでしょうか。原著のタイトルは「Destroying The World To Save It」。世界を救うために、世界を破滅させること。「彼」が、わたしたち人類を「救済」するためにこそ、「仏教」にもとづいて「慈悲深く」人びとを殺害するという「誇大妄想」(もちろん、著者の専門である「心理学」に従えば、ですが)を抱き、そのビジョンに少なからぬ人々がまきこまれ、「幻想」を共有し、科学兵器という説得力を前にして限界を突破し、「終末の強要」が、たとえわずかでも実現されてしまったことの歴史心理学的な背景が、徹底的に追求されています。
圧巻なのは、教団内の組織的力学を緻密に考察した後でなされている、この現象の日本史上における位置づけでしょうか。著者には、『死の中の生命』という、これまた優れた「ヒロシマ論」があるのですが、まさに世紀末の事件の近い淵源のひとつは、私たちの原爆体験にこそあったというのです。これを中心的な「トラウマ」として、そこにオカルト、ニューエイジの隆盛をかさねあわせ、SFをはじめとするサブカルチャーからの影響を考慮し、そして日本の歴史的な宗教現象の諸相(あるいは、「天皇制」もそこに)との類似性が語られます。あの出来事の背後には、日本で発生した無数の事件や文化が凝縮していることが、よくわかりました。
最後にはしかし、著者の関心はアメリカにおける宗教的テロリズムの解剖にむかいます。結局のところ、本書は、アメリカの読者を想定して書かれた本だからです。ここでは、日本との比較論的な考察があります。けれど、著者が論じようとする究極的な「敵」は、ただひとつ。「世界を殺害しようとする集団的な衝動」。これの芽生えに注意をしつづけ、それに抵抗していく想像力を養うことができるのか、もはや、全人類が向き合うべき課題であるようです。
引用元:その幻想と戦うために
その幻想と戦うために
| 写真 | 商品名 |
![]() | 終末と救済の幻想―オウム真理教とは何か |
圧巻なのは、教団内の組織的力学を緻密に考察した後でなされている、この現象の日本史上における位置づけでしょうか。著者には、『死の中の生命』という、これまた優れた「ヒロシマ論」があるのですが、まさに世紀末の事件の近い淵源のひとつは、私たちの原爆体験にこそあったというのです。これを中心的な「トラウマ」として、そこにオカルト、ニューエイジの隆盛をかさねあわせ、SFをはじめとするサブカルチャーからの影響を考慮し、そして日本の歴史的な宗教現象の諸相(あるいは、「天皇制」もそこに)との類似性が語られます。あの出来事の背後には、日本で発生した無数の事件や文化が凝縮していることが、よくわかりました。
最後にはしかし、著者の関心はアメリカにおける宗教的テロリズムの解剖にむかいます。結局のところ、本書は、アメリカの読者を想定して書かれた本だからです。ここでは、日本との比較論的な考察があります。けれど、著者が論じようとする究極的な「敵」は、ただひとつ。「世界を殺害しようとする集団的な衝動」。これの芽生えに注意をしつづけ、それに抵抗していく想像力を養うことができるのか、もはや、全人類が向き合うべき課題であるようです。
引用元:その幻想と戦うために
